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企業倒産予知モデル

中央経済社
ISBN:4-502-36630-7
定価 4,300円(税別)
第1刷 2003年3月15日
第2刷 2003年5月5日
第3刷 2004年10月5日

目次

まえがき
  1. 序論

    1. 問題提起
    2. 本書の目的
    3. 企業倒産予知情報の役割
     
  2. 企業倒産概念

    1. 一般倒産概念
      1. 倒産処理方法
      2. 新しい倒産法制度    
      3. 倒産処理への道程
    2. データによる倒産概念
      1. 倒産率にみる近年の倒産傾向
      2. 上場企業における倒産傾向
      3. 戦略的倒産
    3. 会計監査上の倒産概念
      1. 倒産企業と監査人
      2. 各国の監査基準における企業の継続能力概念    
      3. 企業の継続能力に関する不確実性の評価基準
     
  3. 企業分析の手法と技術

    1. 財務データによる企業分析
      1. 統計処理による倒産予知
      2. 人工知能による倒産分析
      3. SAFモデルによる倒産予知
    2. 株価による企業分析
    3. 格付けによる企業分析
      1. 格付け推定に関する研究
      2. 格付けと企業倒産
     
  4. 財務指標による倒産分析

    1. サンプルデータ
      1. 分析上の諸問題
      2. サンプルデータと分析対象財務指標
      3. 財務指標算出における留意点
    2. 財務指標分析の理論と実践
      1. 財務指標分析における理論
      2. 財務指標分析の実践
      3. データスクリーニング
    3. 財務指標の交差相関分析
      1. 経済環境
      2. 経済環境と財務指標の交差相関分析
      3. 倒産企業の財務内容に関する交差相関分析
     
  5. 倒産予知モデルの構築

    1. 倒産予知モデルの開発の手法と技術
      1. モデル構築の手法
      2. 会計的側面からの指標のスクリーニング
      3. 統計的側面からのデータスクリーニング
    2. 倒産予知に有用な財務指標の識別
      1. 利用データ
      2. 財務指標の識別
      3. 識別財務指標の評価
    3. 倒産予知モデルの開発
      1. 適合モデルの検討
      2. 最終モデルの構築
      3. 業種および企業規模による影響分析
     
  6. 倒産予知モデルによる企業分析の実践と応用

    1. 倒産分析の実践
      1. 倒産企業分析
      2. 粉飾決算企業分析
      3. 非倒産企業分析
    2. 倒産予知モデルによる格付けの試み
      1. 格付説明変数
      2. 格付区分とSAF値
      3. SAF格付けと倒産企業
    3. 倒産予知モデルによる格付けの展望
      1. SAF2002モデルによる発行体格付け
      2. SAF格付けの限界
     
  7. 倒産予知研究の展望と課題

    1. 総括
    2. 倒産予知研究の展望
    3. 倒産予知研究の課題
      1. 倒産法制度の改革による影響
      2. 会計監査に関わる諸問題
      3. 財務データの電子化と企業分析
      4. 会計制度変革による企業分析への影響
     

    参考文献


まえがき

近年のわが国では、経済環境が悪化する中で 大企業の倒産が相次いでいる。1999年に拙著『企業倒産予知情報の形成』の中で 公表したSAFモデルは、バブル経済崩壊直後のわが国における企業倒産を予知し うるモデルとして高い評価を得、金融機関などを中心に実務界において広く採用 された。しかし、バブル経済崩壊から10年を経た今日、わが国における株価や金 利水準はさらに低下傾向をみせ、企業倒産予知をより困難ならしめる状況が続い ている。そこで、バブル経済崩壊以降の1992年から2000年の9年間を分析対象と し、SAFモデル開発時よりさらに大量な倒産企業の財務データを用いて、時代に 則した新たな倒産予知モデルSAF2002モデルを開発した。

ただし本書は、単に倒産を予知しうるモデルを開発するにとどまらない。企 業の財務傾向や企業倒産発生が、地価や金利水準などといった経済環境の変化に どのような影響を受けているのかを分析し、企業分析のあるべき姿について言及 している。

また本書では、倒産企業における財務数値の変動傾向を詳細に分析し、これ まで一般に用いられてきた財務分析における常識が、倒産に至る企業には適用で きないことを検証している。一般の財務分析の理論では「固定長期適合率は、低 い方がより安全性は高い」とされる。しかし、この理論を根拠に「2社の固定長 期適合率を比較した場合、低い値の企業の方が安全性は高い」と結論づけるのは 危険である。事実、本書における大量な倒産企業の倒産直前期の財務数値の分析 結果では、固定長期適合率は倒産に至る企業の方がその後も継続している企業よ りも低い値をしめし、理論に反する分布を示していることが明らかとなっている。 このように企業分析、特に企業倒産予知は、一般の財務分析の手法や技術を用い るだけでは十分ではない。本書では、経営に行き詰った企業の企業行動が財務数 値に及ぼす影響について詳細に分析した上で、情報利用者を誤導しない企業分析 のあり方と倒産予知のための具体的手法を提案している。

しかし、本書はもとより先行研究やこれまで一般的に用いられてきた財務分 析における常識を否定することを目的としているものではない。あくまで、情報 利用者を誤導することがない安定的、かつ信頼性の高い企業分析の手法と倒産予 知モデルを提供することを主眼としていることを汲み取っていただければ幸いで ある。